ウチの息子が、プラレールで遊んでいます。

短い周回路に、ありったけの車両をつなげて走らせるもんだから、
線路の半分くらいは汽車で埋まってます。

この光景を見てて、ふと
「車掌の本分」
という話を思い出しました。

無題
「車掌の本分」
国語の教科書に載っていた話ですが、
小学校くらいの時に習ったのだと思っていましたが、調べたら中3でした。

ある遊園地に、サルが運転手と車掌を勤めてる列車がありました。
人気が出てくるにつれ、スケジュールは過密になり、
どんどん連結される車両が増えていき、
とうとう、周回路になっている線路の中で、Cの字を描くほど車両が長くなってしまいます。
そうすると、ぐるっと回って、運転手が車掌の後ろまで来てしまうようになります。

そんな中、車掌のサルの元気が無くなります。
飼育員は、過酷なスケジュールが原因だと思い、サルを休ませるよう遊園地の偉い人に提案しますが、
提案はなかなか受け入れてもらえません。
ところが、本質はそこではありませんでした。

車掌のサルは、
「車掌の仕事は、列車全体を後ろから眺め、乗客の安全を守ること。
運転手が背後にいるようなこの状況では、車掌の本分を全うできない」
と思い悩み、うつになってしまったのです。

ただ単に、「やれ」と言われたことを、
カタチだけやってる、というのが許せなかったのです。


自分の役割を理解し、それを忠実に全うしようという責任感。
それが、状況(もちろん、「忙しい」と言う状況もあります)によって、全うできない辛さ。
このサルと同じような状況でうつになってしまう方はたくさんいます。
「真面目な人ほど、うつになりやすい」
というのは、こういった所です。


でも逆に、
運転手のサルや、飼育員や、遊園地の人達みたいに、
「こんなことで何で?」
と思う方がいます。
むしろ、その方が多いのかもしれません。


責任感はとても大事です。
でも、
体調を崩した時くらいは、休んでもいいのではないでしょうか?

今のうちにしっかりと休まずに、不調のまま頑張っていたとしても、
本来の力が発揮出来ずに、かえって周りに迷惑を掛けてしまったり、
体調が悪化して、結局今休むよりも長い期間休む事を余儀なくされてしまうかもしれません。

しっかりと休んで体調を整え、
そして休んだ分を挽回する方が、むしろ責任を果たしてる、とも言えます。


とは言っても、なかなか簡単には休めない、と言うのが現実です。
そこで、お薬の力を借りるのです。


抗うつ薬は、そのほとんどは即効性はありません。
なので、しばらくはじっと飲み続けます。

するとある時、
「そういえば前より辛くなくなったな」
という感じで効果を実感します。

今まで、こだわっていたものが、
「まぁ、別にいいか」
と、流せるようになってきます。

自分の中で引っかかってた事が些細な事だったと気づくかもしれません。

いいか、悪いかは別として、
車掌のサルの考え方から、周りの人達の考え方にシフトしていくのです。

そんな風に気づく事が出来れば、
治療の登山は、ほぼ山頂に近づいています。


山頂では、いい空気を吸い、景色を見ながら弁当でも食って、ゆっくりします。
治療が山頂まで到達したからと言って、すぐに下山するのはいけません。
そこで、「いい癖」をしっかりと付けることが大切だからです。

前向きに考えられる、
「いい癖」
がしっかりと付けば、あとは慎重に慎重に下山していきます。

そんな感じで、うつの薬物治療は進められていきます。


なので、うつの治療中の方は、決して焦らないように。
一緒にのんびり、療養していきましょう。