お薬を服用して、効果を得られるためには、
まず初めに、お薬が「溶ける」という過程が必要です。

お薬が溶けない事には、お薬が身体の中に吸収されず、効果が発揮できません。


ちなみに「身体の中」と言うのは、血管や内臓などの組織の中の事で、
口から食道、胃、腸の中は、医学的には身体の外側、という事になります。

胃薬でもほとんどの場合、胃で溶けてその場で効くわけではなく、
溶けたものが小腸から吸収され、それから薬効を発揮する、という訳です。


で、
調剤中に床に落としてしまったり、使用期限が切れてしまって廃棄処分になるお薬を使って、
その「溶ける」と言う部分の実験をしてみました。

まずは、普通のカプセル剤です。
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 水に浮かべて、少しかき混ぜてやると・・・

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 溶けました。

※厳密にいうと、濁ってる状態は、水とお薬が「混ざっている」状態で、「溶けている」状態ではありませんが、
便宜上、「溶けた」と表現します。


ところが、別のもう少し大きめのカプセル剤を廃棄し、 流水でしばらく流した時・・・
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カプセルが溶けずに、水風船のような感じで排水トラップに残ってしまいました。

カプセルはほとんどが「ゼラチン」で作られています。
なので、ゼリーを作る時のイメージで、この残渣をお湯に溶かしてみます。
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ぽと。

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しゅわっ!
一瞬で溶けてなくなりました。

私自身、カプセルを呑みこむのは苦手で、喉につっかえた感じが嫌なのですが、
この実験を見てみると、
カプセル剤を飲むとき、効率よく服用するには、水よりもお湯の方がいい、と言う訳です。


ついでに、特殊な溶け方をするお薬を2点。

1点目は、「フルニトラゼパム」と言う睡眠薬です。
このお薬は、飲み物や食べ物に混入させ、犯罪などに悪用された事があり、
アメリカでは禁止薬物になっています。
そういう点も踏まえ、
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 溶かしてみると・・・

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 真っ青になります。
こっそり混入されても、気づくようになってます。


2点目は、「バルプロ酸」と言うお薬の、徐放錠です。
これは、よく問い合わせが来るお薬なのです。
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溶かしてみます。
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この通り、溶け残りがあります。

これが、便中に出てくるので、
「お薬が便と一緒に出てきたが、大丈夫なのか?」
という問い合わせをいただくのです。

残渣を、自分で発見することは少なく、
主に、介助を受けてる方の便の中から、介助者の方が発見することが多いです。

私は精神科病院に勤めていた頃、病棟で看護師の方に、
「何か残ってる」
と、大量の便ごととってあるのを見せられたことがあります。

これは、特殊なお薬で、
徐々に溶出させることによって、じわーっと一日中しっかり効くように、と設計されていて、
(つまり、徐々に放出させる錠剤=徐放錠)
仕組みのイメージとしては、スポンジの中にお薬の成分が入っていて、
それを少しずつ絞ってお薬が出て行く、と言う感じです。

なので、最後にその「スポンジ」の部分が便と一緒に排泄されるのですが、
もちろん、それが正常です。

ちなみに、その「スポンジ」部分も、しつこくかき混ぜてみると、
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粉々になって、殻だけ残りました。


という訳で、
お薬が「溶ける」という過程は、とても重要な過程で、いろいろ工夫がされています。

ジェネリック医薬品でも、
成分は同じ、と言っても、この溶ける過程に関しては、結構ばらつきがあり、
実際に実験してみると、
「これで先発品と同じ効果が得られるのだろうか?」
と思うものも、ありました。
(今は、どこのメーカーも改善しているようですが)

なので、ウチの薬局では、
数多いメーカーの中からジェネリック医薬品を選ぶ時は、
この「溶ける」と言う部分(溶出試験)のデータも参考にして選ぶようにしています。


とは言え、
しっかり溶けるように設計されているお薬でも、
水やお湯以外の、お茶やジュースでは溶けにくい、と言う実験結果もあります。

お薬は、適切に服用しましょう。